Reboot, Renew and Restart

Note

2017年から2019年にかけて、僕は多くの作品を手掛けており、文字通り24時間365日制作に追われていた。まさに忙殺されていた。2017年末にはStella Magnaの活動がスタート。ありがたい事に年を追うごとに『GRANBLUE FANTASY』ユーザーの中で認知度と人気が高まっていき、2019年春から夏にかけての『グラブルEXTRAフェス』ツアーは過去最大規模かつ内容的にも充実したものになっていた。

一方で、その時期ほとんど休みがなかった。年に2回ほど家族と旅行に行く以外、全く休みがない状態でひたすら仕事を続けていた。睡眠時間も十分に確保できず、いつも疲れていた。肉体的にも精神的にも限界なのは自分でもよく判っていて、一通りの計画を終える2020年2月で、一旦仕事を整理すると決めていた。

そしてそれを実行した途端、世界はCOVID-19パンデミックに飲み込まれ、すべてが止まった。

多くのミュージシャンがそうであったように、僕も約1年半、ほとんどの仕事を失って暇を持てあました。漫然と酒を飲む事にもいい加減飽きて、ただの気まぐれで、突然何枚かのアナログレコードを買った。十数年前にあらかたのレコードコレクションと一緒にプレイヤーを処分してしまっていたのに。

レコードを買ったらプレイヤーが欲しくなる。洗浄方法もすっかり忘れてしまっていたが、知らない間にアナログレコードのリバイバルブームが来ていて、アクセサリー類は当時よりもむしろ充実していた。手に入れたレコードをピカピカに磨き、丁寧にターンテーブルに載せ、慎重に針を落とす。作業のBGMとしての「ながら聴き」ではなく、仕事の為のチェックでもなく、純粋にリスニングの為に音楽と対峙するなど、一体何年ぶりだったのだろうか。オリジナルのダイナミクスで聴くお馴染みの曲たちは、まったく違って聴こえた。リマスターCDやサブスク配信で聴ける音とは全く違う。

知らない間に涙を流していた。音楽っていいなぁ、と心の底から思えた。

20数年ひたすら走り続けて来て、プロミュージシャンとして常に音楽の中にいたけれども、音楽が本当に好きだ、と果たして自分は思い続けていたのだろうか。むしろ音楽に付随してくる有象無象にうんざりしきっている自分がいた。

毎年500枚ほどのCDを購入していたが、ただ買っていただけだ。ただ買って、封も切らずに棚に並べていた。僕のCDラックにある数万枚のCDの多くは未開封のままだ。この3年間で1,500枚ほどのレコードを手に入れた。すべて聴いた。入念に手入れして、コンディションに満足できなければ買い直している。まだまだ欲しいレコードが沢山ある。勿論すべて聴く。レコードを聴く度に心が浮き立つ。久しぶりに味わう感覚。3年経ったが、当分止まりそうにない。この期間に音楽と「再会」できた事は、間違いなく、今後の僕の人生の大きな糧になると思う。

COVID-19パンデミックで多くのものが失われた。実際亡くなってしまった方々もいる。でも、ただ奪われただけではないはずだ。何かを手に入れたければ、その代償として何かを差し出すしかない。この世界はそういう風にできている。しかし逆に、何かを失ったと思える時にも、手の中に残っているものが確かにあるはずだ。少なくとも僕はそう信じている。


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