SpitFunk Digital Reissue 2023

SpitFunkReleases

SpitFunkは、日本ではまだ音楽配信という言葉が一般的ではなかった2006年から、いち早く音源のダウンロード販売に取り組んでいた。懐かしき「着うた」の時代だ。当時はまだ今のように個人を相手にした配信代理業者はいなかったので、当然大手企業の力を借りて配信の手続きを行った。

何年も前からSpitFunkの各作品群をサブスク化しようという気持ちはあったが、そうするなら昔手配したダウンロード販売と価格的な整合性を取る必要が出てくるし、どう考えても僕の手元で一元管理するべき。という事はいったん配信契約を終了させる必要がある。猛烈に面倒だ・・・と逃げてしまい、何年も放ってしまっていた。

昨年春、各所を辿って懐かしい人々に連絡を取り、関係者に便宜を図っていただき、なんとか過去の配信契約を終了させた。しかし去年はそこで力尽き、また1年放置してしまった。

今年、もういい加減にやろうと遂に心を決め、全スタジオ音源のサブスク化の手続きを行った。すべてのオーディオデータを入念にチェックし、歌詞配信の為の必要なファイルを準備。9月16日、無事、SpitFunkが残した全楽曲、全公式スタジオ音源のサブスク化が完了した。

2003年『Delights』
2004年『WILL』
2008年『BROTHERHOOD』

以上3枚のオリジナル・アルバムに加えて、シングル曲、アルバム未収録曲、ヴァージョン違い等を、『Gratitude And Other Assorted Love Songs』というコンピレーション・アルバムにまとめた。タイトルは勿論洒落。ベテランの音楽ファンなら誰でも判るだろう。

10年の活動期間の中で遺した音源は、たったの37曲。バージョン違いを含めてこの数字。なんと筆の遅いバンドなのだろう。多分制作当時以来で入念に聴いたけれども、音の中に込められたとんでもない熱量に触れ、忘れていた色々な事を思い出した。

僕らが生み出したものの中に、真にオリジナルなものなど一つもない。そんな事は分かり切っている。僕らが創りあげた音楽を構成するすべての要素は、一つ残らず、偉大なる先達から受け取ったものだ。でも音楽とはそういうものなのだと、僕は自信を持って言える。その意味でSpitFunkは誰の真似もしていなかったし、誰にも似ていなかった。今聴いてもそう思える。商業的な成功にはかすりもしなかったが、その事に関してだけは心から誇らしく思う。僕らが目指した場所、僕らが見下ろした光景は僕らだけのものだ。

配信を開始した直後、望外の通知が来た。iTunes JapanのR&Bアルバム・チャートに4作品ともチャート・インした。

9位『Gratitude And Other Assorted Love Songs』
10位『BROTHERHOOD』
11位『WILL』
12位『Delights』

当然、最大瞬間風速的なチャート・アクションではあるし、サブスク全盛の時代のダウンロード・チャートなので、そこまで莫大な数字が動いた訳では当然ない。それでも何のプロモーションも掛けていない大昔の作品を聴いてくれる人がいる、という事だけで十分嬉しい。


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